アメリカプチ失恋記-final

アメリカ生活

前回の続き

アメリカプチ失恋記-1

アメリカプチ失恋記-2

アメリカプチ失恋記-3

アメリカプチ失恋記-4

留学生活も残すところわずかになり、自分は生活をたたんだり、実験をまとめたり、留学生活を終わらせる準備をしていた。また留学生活が終わる直前に、今の職場への就職も決まった。

マックスと別れたシェルビーは、側から見ると以前と同じように社交的に快活に働いているように見えた。もちろん、婚約した人との別れがそんなに低ダメージな訳はないだろう。だが、そこはシェルビーの矜持のようなものだろうか。前と変わらず、自分含め、みんなとよく喋り、happy hourやちょっとしたラボイベントを企画してくれた。

就職が決まって、シェルビーが「ディナーでお祝いをしてあげる、どこか行きたいレストランある?」とメッセージをくれた。

何となく、二人でということなのかなと思った。「他のラボメンバーはいるの?」みたいなことを聞いても良かったのだが、自分は聞かなかった。2年近く続いたシェルビーとのやり取りの中で、これが唯一、自分が出すことができた、男らしさだったように思う。以前友人に連れていってもらったベセスダのフランス料理屋が美味しかったので、そこを指定した。日程のやり取りをして、当日、レストランに向かった。

雨の日だった。レストランに着くと、シェルビーが一人で赤いドレスを着て待ってくれていた。緊張して、ご飯が喉を通るかどうか、会話についていけるか心配だったが、思いのほかリラックスできて、たくさん食べれたし、たくさん喋った。料理もどれもとても美味しく、いいレストランのチョイスができた(thanks firiend!)シェルビーは学生生活のことをよく喋ってくれた。シェルビーが育った場所は多国籍な地域で、学校が、NIHや今のラボのような感じで、とてもヘテロな空間で、彼女はそれが性に合って好きだったらしい。自分は彼女に「実は自分の英語はそんな大したことなくて、グループ会話は全然ついていけなくて、わかったフリをしているんだ」と正直に告げた。彼女は「全然そんなふうには見えない。だってこうやって会話できているじゃない」と言ってくれた。

また後日、シェルビーがアーリントン墓地へ行こうと誘ってくれた。この前のディナーの時もそうだったが、まさかアメリカで女性とデートする機会があるとは想定しておらず、着古した服の中からマシな服を選んだ。自分の車で行くことになったのだが、改めて見るとろくに掃除もしたことがなく、汚かった。でも、最後の最後まで自分の体調は芳しくなく、そういう段取りを余裕を持って行うことが難しく、出かけるギリギリになって服を選び、大急ぎで御座なりな車掃除をした。

2013年製の中古のSentraではあったが、自分で運転し、彼女を自宅まで迎えに上がり、ピックアップし、何とかギリギリのエスコートはできたように思う。アーリントン墓地へ向かい、施設内をゆっくりと散歩した。季節は秋で紅葉と日差しが美しい中、衛兵の演奏を聞いたり、戦争の話をしたりした。彼女の友人の旦那さんが戦争で亡くなった話もしてくれた。黄昏の中、ちょっとチルな、侘しい気持ちになった。

それが、帰国前1ヶ月のハイライトだった。

アパートを引き払った後、自分は2泊3日でDCのホテルを取り、1日はDCを観光した。シェルビーを誘おうとも思ったが、勇気がなくできなかった。誘うべきでもないかなとも思った。代わりにシェルビーがDCのおすすめのレストランやバーを教えてくれ、自分はそこを巡り、彼女に写真を送った。

そして次の日、自分は7年間のアメリカ留学生活を終えて、日本に本帰国した。

帰国後もシェルビーとかなりの頻度でWhatsappのやり取りをしていたが、数年経った今はもうほとんどなくなってしまった。帰国後、しばらくはシェルビーのことばかり考えていたが、仕事や病に追われ、ほとんど考えなくなってしまった。恋からも覚めてしまったようだ。そう信じたくはないが、もしかするとこれが最後の恋だったのかもしれない、と感じている。

他のラボメンバーとのやり取りも続いており、直接尋ねたわけではないが、写真などからシェルビーにまた新しいパートナーができたらしいこともわかった。こちらはMちゃんと別れて、もう5年近く経過するが、日本に帰ってからは実家暮らしという名の療養の日々が続き、いまだに恋愛を再開できていない。だが、昨年は長年のバケットリストであった、キックボクシングを開始することができ、それが自分の精神と肉体に非常にプラスの影響を与えているような気がするのである。もしかすると、また一人の男として、異性やパートナーを求める日に戻って来れるのかもしれないと、そんな希望をまだ捨て切ってはいない今日この頃である。

終わり。

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