うつ病とは背側迷走神経のギアセカンドである

うつ病治療

うつ病とは背側迷走神経のギアセカンドである」これは、自分がうつ病・複雑性PTSDを患ってから10年以上苦しみ、自分が経験した身体症状、本で学んだ知識、カウンセラーさんとのセッション、ポリヴェーガル理論、それらを統合して辿り着いた、自分の暫定的な結論であり、集大成的な仮説である。

あくまで、私一人の経験により導き出された仮説である。また自分は博士号は持っているものの、精神疾患は専門ではないので、あくまで素人の考えの一つとして、捉えて頂けたら幸いである。

この仮説はポリヴェーガル理論をもとにしているので、まずはそれを簡単に解説しなくてはならない。

※アイキャッチ画像は、尾田栄一郎さんの”ONE PIECE”の”ルフィ”の「ギアセカンド」のシーンをモチーフに、背側迷走神経を擬人化したイメージをChatGPT(画像生成AI)により作成しています。

自律神経を3分割するポリヴェーガル理論

中学・高校の生物学では、自律神経には交感神経と副交感神経が存在すると習う。自律神経ならびに交感神経や副交感神経はメディアでも度々取り上げられるため、生物学を学んでいない人でも知っている人は多いのではないかと思う。

交感神経=人の興奮状態を制御し、交感神経が優位になるとアクティブにハイテンションになる

副交感神経=交感神経を抑制する形で存在し、副交感神経が優位になるとリラックスした、落ち着いた状態になる

というのが一般的な説明になる。これでもおおよそ間違ってはいないのだが、実は副交感神経は、

腹側迷走神経

背側迷走神経

の2種類に分割することができる。そして人間の自律神経を「交感神経」「腹側迷走神経」「背側迷走神経」の3種類に分割するのがポリヴェーガル理論の肝である。

従来の自律神経を2分割する方法では、副交感神経の役割は「リラックス、落ち着き」であった。だが、3分割する方法では、この役割は副交感神経のうち「腹側迷走神経」の役割に当てられる。ポリヴェーガル理論では特に「人と一緒にいて安心を感じる状態」をコントロールする神経として説明され、メンタルの安定には腹側迷走神経がしっかりと機能することが重要である。

では、残りの「背側迷走神経」の役割は何か?それは「抑制、凍りつき、シャットダウン」である。感覚をオフにすることで危機をやり過ごす「死んだふり」のような機能を持つものとしても説明される。

腹側迷走神経も背側迷走神経も、概念上の存在ではなく、どちらも科学的に存在が証明されている、私たちの体に通っている自律神経である。動物の進化的に一番古いのは背側迷走神経であり、次に交感神経、そして腹側迷走神経が進化的に一番最後に現れたと言われており、腹側迷走神経は社会的なつながりを大切にする人間を含む哺乳類でより発達している。

従来のうつ病を科学的に語る時、脳の機能に焦点が当てられることが多かった。例えば前頭前野であったり扁桃体であったり。自律神経に関しては、副交感神経の機能を高め、自律神経を落ち着かせることが大切である、と語られることが多く、うつ病そのものを説明するものではなかった。

ところが背側迷走神経を自律神経に組み込むことで、うつ病、つまり「抑鬱された状態」というのを凍りつき、シャットダウンを司る背側迷走神経が優位になっている状態として説明できるのである。これにより、脳機能だけでなく、自律神経の機能面からも、うつ病を説明することが容易になり、ポリヴェーガル理論が革新的な理由である。

腹側迷走神経により作られる「耐性領域」

さて、ポリヴェーガル理論では自律神経、つまり体の状態を表す図として以下のようなグラデーションのかかった図がよく用いられる。

交感神経は赤、腹側迷走神経は緑、背側迷走神経は青で表されることが多い。また交感神経は腹側迷走神経と協調的に機能することで、赤+緑のブレンド領域を作り、自律神経がこの状態だと、チャレンジ精神が湧き、腹側迷走神経と背側迷走神経が協調的に機能した場合の緑+青のブレンド領域では、一人でリラックスしている状態を表しているという。

三つの自律神経が協調的に働きうることは、ポリヴェーガル理論において一般的にされる説明で、自分は最初カウンセラーさんに教わった。また「ブレンド」という表現は以下の本で使用されているのを採用させていただいている。

イライラ、不安、無気力、トラウマ……負の感情がラクになる 「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本

腹側迷走神経により構成される領域(赤+緑のブレンド、緑、緑+青のブレンド)は、耐性領域または耐性の窓と呼ばれ、自律神経の活動レベルがこの範囲に収まっている場合、人間は概ね落ち着いて活動できていると言える。この領域は「ストレス耐性」とも表現できると思う。

健康時、時に嫌がらせを受けたりして激昂しパニックになったり(赤の領域)、時に失恋して落ち込んだり(青の領域)、そういう大きな変化を時々経験しながらも、基本的に自律神経が耐性領域に留まり、概ね落ち着いて人間生活を送ることができる。

日常的にストレスの多い時期が続いたり、うつ病やPTSD等の精神疾患を患うと、この耐性領域が狭まると言われている。「以前なら耐えられたストレス」に耐えられなくなり、パニックで激情してしまうことが増えたり(赤)、落ち込んで鬱々としベッドから起きれないことが増えたり(青)、自律神経のレベルが、緑以外の領域に留まることが増える。

健康状態に戻るためには、耐性領域(緑)を再び拡大させることが肝となる。

ここまでが、一般的になされる、ポリヴェーガル理論を用いた、自律神経の状態、ならびに精神疾患の説明である。以下の二つは、自分が見つけたポリヴェーガルに関するとても良質な記事なので、興味のある方はこちらも参考にしていただきたい。自分が取りこぼした範囲や、間違った説明などがあれば、それらが補足されるだろう。

人といるだけで疲れるのはなぜか ~安心感が自律神経に与える影響~

心的外傷後ストレス障害(PTSD;Post Traumatic Stress Disorder)/トラウマ・解離の外来

ポリヴェーガル理論の最大のメリットは「うつ状態」あるいは「うつ病」を背側迷走神経(青)から説明できる点である。従来の交感神経(興奮作用)と副交感神経(リラックス作用)の二つの自律神経のモデルでは「うつ状態」というのを自律神経のみで説明することができなかった。自律神経から体調を整える場合、「副交感神経の働きをあげよう!」という説明がなされることが多かった。だが、低覚醒状態を誘導する背側迷走神経をモデルに組み込むことにより「うつ状態」を簡単に規定でき、うつ病を自律神経という視点からも説明しやすくなった。

うつ病により背側迷走神経のギアが一段上がる

さて、ここからが本題である。

繰り返しになるが、上記がポリヴェーガル理論に関する一般的な説明である。

だが、ここから説明することは、筆者の経験に基づくオリジナルなもので、医学的に正しいと証明されたわけでは決してない。ただ、自分が経験した症状を説明するために、このモデルが一番しっくり感じる、というのもまた事実である。

かつて私は、自分がうつ病を発症してから現在に至るまで、急性期からある程度回復するまでに経験した、身体症状を全てまとめ図解したことがある。

【図解】うつ病・パニックの症状と脳機能低下との関連性一覧

その中で、筆者が長年最も苦しみ、最も原因がわからなかったのが、希死念慮と胸の違和感だった。これまでも散々、自分の希死念慮に関して言及してきたが、代表的な記事だけ貼っておく。

(希死念慮に関する過去の記事)

自分の希死念慮を徹底的に文章化してみる

希死念慮の原因は孤独感だったのか?

(心臓の違和感に関する過去の記事)

循環器内科に行った話

自分が経験した希死念慮は自傷妄想が伴い、必ず明け方の目覚めの時に生じた(不思議と昼寝から目が覚める時は希死念慮がなかった)。また、希死念慮と同時に、心臓に独特の不快感を感じ、心臓がなくなっている感覚や、心臓が動いていない感覚というのほぼ毎朝経験していた。

昨年パニックを経験した後、日本心理教育センターを訪ね、そこでカウンセラーさんにポリヴェーガル理論を教わった。そしてこの理論が、自分が長年苦しんだ、希死念慮や心臓の違和感を綺麗に説明できることに気が付き、すぐに本を何冊か読み、カウンセラーさんとセッションを繰り返した。つまり、背側迷走神経が強く働き、低覚醒が維持された状態の時に、希死念慮を経験するのではないかと。また、背側迷走神経には心臓の動きを抑制する働きもあるので、背側迷走神経が強く働きすぎることで心臓が動いていないような不快感を感じるのではないかと。

その後も思索を重ね、自分はもう一つ、仮説を思いついた。

「うつ病時、背側迷走神経のギアが一つ上がるのではないか?」ということに。

私がこの仮説を支持する理由の一つは「希死念慮や心臓の違和感という症状は、健康時には経験し得ないもの」だからというものがある。過覚醒時によく経験する「眠れない」という症状は、健康時にもしばしば経験する。例えば、失恋した時とか、肉親が亡くなった時とか、次の日が試験だとか。自分はかなりの緊張しいで、受験はおろか、期末試験のレベルでも、前日ほとんど眠れないということをしょっちゅう経験していた。後述するように「PTSD由来の過覚醒は、通常の過覚醒と質が異なる」側面も確かにあるのだが、症状そのものは「眠れない」という、健康時に経験することの延長線上にある。

一方の、希死念慮や心臓の違和感というのは、健康時に低覚醒状態に突入しても全く経験したことがない感覚であった。例えば、健康時、ものすごくショックなことがあり、「自殺したい」とよぎることもあるだろうが、希死念慮は、それとは全く感覚が異なるものなのである。おそらくこれは、背側迷走神経のギアが一段階上がった者にしか、わからない感覚である。

もう一つの理由は「背側迷走神経のギアが上がった瞬間」「背側迷走神経のギアセカンドが解放された瞬間」というのを、自分が明確に経験したからだ。

病の発症時の自分は、学生時代の研究室で教授や先輩から慢性的にいじめられ、でも反抗すると、論文を出させてもらえなかったり、学位をとらせてもらえなかったり、実験させてもらえなかったり(これはどの道させてもらえていなかったが)、報復が怖く、数年に渡り四六時中、オーバーワークをこなしながら、彼らの欲求不満のサンドバッグにならないといけない状態が続いていた。またプライベートでも、リストカットなどのメンタル問題を抱えたMちゃんという女性を助けるという役柄を、気がついたら背負ってしまっていて、仕事でもプライベートでも安息・逃げ場がない状態が続いていた。

そのストレスレベルマックスの時に、Mちゃんの実家に呼ばれた際に、Mちゃんのお父さんがお母さんに暴力を働いているのを目の前で目撃し「こんなこと、自分ではとても解決できない。でも彼女たちから自分は逃げられない。どうすれば。お手上げだ…」と感じ、ブラックアウトし、脳に異変を感じた。既に並々だったコップに最後のストレスが注がれて、溢れて崩壊してしまったのだ。そして、次の日から、希死念慮と自傷妄想が始まったのである。

それは背側迷走神経がギアセカンドを解放し、私を強制的に仮死状態にすることで、迫り来る生命の危機・自我の崩壊から、私の身を守ろうとした瞬間だった。

この時に始まった希死念慮は、留学のために渡米し、教授や先輩、Mちゃんといったトラウマ的な人物から物理的に距離が離れた後も、Mちゃんと別れた後も、形を変えながら、10年近く続いたのである。原因となる存在がいなくなっても、事故の後遺症のような形で自分の中に症状だけが残り続けた。

これらの理由から、ワンピースのルフィがギアセカンドを解放し、自身の能力のレベルを一段上げたように、背側迷走神経にも、通常時とは一段レベルの上がった状態「背側迷走神経のギアセカンド」が存在するのではないか?というのが私が経験から導き出した仮説である。

ポリヴェーガル理論の図に書き加えると以下の紫のゾーンがそれに該当し、ここでは「希死念慮を経験する超低覚醒状態」「背側迷走神経のギアセカンド」とし、通常の低覚醒状態(青)のさらにしたに存在する領域(紫)として定義する。

うつ病の急性期、つまり背側迷走神経のギアセカンドが解放されてから、渡米した後の数年間の間、自分の自律神経のレベルは、かなりの低覚醒状態にシフトし、朝は必ず希死念慮から始まり、日中にかけて、徐々にゆっくり覚醒レベルがちょっとだけ上にシフトした。症状がキツい時期でも夕方になると比較的快適に過ごせていた。日中も、緑+青のブレンドの「一人でまったりモード」に留まることが多く、寂しくても誰かと関わる気が起こらなかった。人の存在が怖かった。一人で過去のトラウマのルミネーションをすることが多く、人に会った時は、誰彼構わず、自分のトラウマ体験を聞いてもらっていた。常に過去が頭で再現されていて、過去が過去にならなかった。

一番困ったことは「新しいものが怖く、チャレンジ精神が全く湧いてこない」つまり、自律神経のレベルが、赤+緑のブレンド状態に全く突入しないことであった。新しい実験を学ぶ機会があっても、背側迷走神経が「アブナイ、ヤメテオケ」と言い、自分がその状態に突入することを阻んだ。「せっかく留学したのに、旅行も行けない、研究にも身が入らない、一人でメンタルヘルス関連本の読書を永遠にしているだけ」というのが、渡米後3年間の自分の自律神経の状態であり、悩みだった。

加えて「物語大好き人間」だった自分が、小説や映画に全然触れなくなってしまった。今まで毎週必ず何かしらの新しい物語に触れていた自分が、映画、すなわち架空の未知の物語という「そのレベルの新しさ」に触れることさえ、少し怖く、億劫な状態が10年近く続き、最近になってようやく、映画を見る自分が戻ってきたかな?と感じるのである。

自律神経のレベルがだいぶ覚醒方向にシフトしてきた現在においても、恋愛が億劫ということは「恋愛できる自律神経の状態が、赤+緑のブレンド領域においても、だいぶ上の方に存在しているということかな?」と思っている。

それと、うつ病経験者が口を揃えて話す「慢性的に夜に歯磨きできない・風呂に入れない」という状態も、青と紫の間くらいの、かなりギアセカンドに近い領域に位置しているのではないかと感じる。

ギアセカンド解放直後の自分が経験した、非常に不思議な症状がある。それは「全く緊張しなくなる」という症状だ。

本来、期末試験を控えるだけで、緊張してほとんど寝れなくなる自分が、学会発表を前日にしても全く緊張しなくなってしまった。緊張しないどころか、発表練習すらできないのである。それまでは、学会で発表があると、緊張して自分が納得いくまで何度も練習してたのだが、発表前日にノー練習であっても、全く緊張しない、あるいはできない。そんな状態でも、なぜだか普通に寝れてしまう。だから「別にどんだけ非難されてもいいから」みたいな心理状態で、ぶっつけ本番で発表に挑む。それでも、昔取った杵柄で、学会発表において、大きな失敗を犯すことはなかったのだが。

もう一つ自分にとって印象的だった「緊張しないエピソード」は自動車免許の卒業検定で全く緊張しなかったことだ。本来、その手の検定系試験では、これでもかというほど緊張し、前日寝れなくなる自分が、卒業検定という「受かって当たり前、失敗すると余分に高いお金がかかる」という緊張要素満載なものを目の前にしても、全く緊張せずに眠れた。

その他にも「飛行機に乗っても全く怖くない(健康時は墜落したりしないかな?と一縷の不安が生じていたのだが、それが全く生じない)」とか「高いところが全く怖くない」みたいな症状もあった。

当時不思議でしょうがなかったが、背側迷走神経の支配力が絶大すぎて、交感神経がほとんど機能できなかったのであろう。恐怖心すら感じることができなかった…

実は、自分がアメリカに留学できた要因の一つに「背側迷走神経の支配力が絶大で、交感神経がうまく機能せず、恐怖心を感じることができなかった」というのがある。海外旅行すらしたことがなかった自分にとって「アメリカ留学」など本来、未知すぎて、恐怖の塊であるはずなのだが、それを感じず、アメリカ生活、現地での研究生活をうまくイメージできていないまま、脳が麻痺した状態で、仕組まれた運命に従うが如く渡米した。

もし次にアメリカに行くとしたら…

死の恐怖すらうまく感じられなかった自分にとって、渡米はあまり怖いものではなかったのである。ネットで見かけた作り話だろうが「地雷原を歩かせるために、兵士に恐怖心を感じさせなくなる薬を打ち、怖いもの知らずな状態で兵士に地雷原を突っ切らせる」みたいなものに、類似性を感じる。

以前の研究室、アメリカ生活などに恐怖心を感じるようになったのは、渡米して、拘束時間が減り、生活が楽になり、自律神経のレベルが少し回復してからの話なのである。

超パニックの繰り返しによる耐性領域の拡大という荒療治

今の研究室では、学生時代のトラウマの再体験をすることが多く、自分はたびたびパニック・過覚醒し、通院し投薬するに至った、とこれまで書いてきた。

パニック

パニックの夜

パニック・アゲイン

日本心理教育センターでカウンセラーさんに受けた説明では、このようなトラウマ・PTSD由来の過覚醒時には交感神経と背側迷走神経が綱引きをしている状態で、赤+青のブレンド状態となり、通常の激昂しているような過覚醒とは違くことが起きていると教わった。図解すると次のようになる

この状態は「眠れない」という点においては、「中学の時に期末試験の前日に緊張して眠れない」という状態に似ているのだが、強度や質がかなり異なる。ここでは赤+青のブレンド状態、PTSD由来の過覚醒を「超パニック」と定義する。超パニックでは、一睡もできなかった、翌日の日中でも体が恐怖に身構えて、眠れるということがない。昼寝でうとうとすることすらできないレベルの警戒モードなのである。自分の場合、超パニックは24時間程度が経ち、ようやく落ち着いて眠れることが多かったが、ひどい時は3日程度持続した。寝ようとし、目を瞑るが、常に、怖いボスのことや仕事の締め切りのことを考えて、腕に力が入る。意識が全く途切れない。

アカデミックキャリアの存続の危機を、生命の危機と体が勘違いしてしまい、いくら理性で説得しようとしても、扁桃体には言葉が通じないため、警戒モードが終わらず、超パニックが解除されない。

扁桃体のエリーちゃん

一方で、幸か不幸か、この超パニックを繰り返していくうちに自分の体調が良くなっていったということもまた事実。

1のアメリカ留学終盤は、友人と遊ぶことや旅行することが増え、ギアセカンド解放直後に比べると、だいぶ自律神経のレベルが回復していた。それでも希死念慮や心臓の違和感は最後の最後まで残り、これらの症状が緩和したのは、2の帰国後、両親と同居し始めてからである。

おそらく、身近に肉親がいる環境で(つまり人と一緒にいる状態)、腹側迷走神経(緑)が刺激される機会が増えて、自律神経レベルが覚醒方向に少しシフトし、 ギアセカンドの症状に突入しづらくなったのだと思う。

働き始めて、3の超パニックを経験することが増えたが、これにより、交感神経のレベルが振り切れてしまい、4. 結果として自律神経のレベルが引き上げられる形となり、さらに覚醒状態にシフトし、耐性領域も徐々に広がった。

昨年は、5. ストレスレベルがさらに上がり、自分では対処できない連続超パニックを経験し、通院・投薬を開始した。このタイミングで、初めてポリヴェーガル理論も知った。これにより、耐性領域ががさらに広がった。6. キックボクシングの開始により、この傾向がより加速した印象もある。

6. が現在の自律神経の状態である。10年近く続いたギアセカンドの症状は、ほとんど気にならないレベルまで回復した。長かった…

結果論ではあるが、超パニックの経験が荒療治になり、自律神経のレベルがとんとん拍子に覚醒方向へシフトしていった。だがこれはあくまで荒療治で、万人に勧められる方法ではない。荒療治に失敗し「トラウマの再体験」により、症状が悪化し、難治化する恐れも十分あるからだ。

だから、もしあなたが現在の環境で、トラウマの再体験による超パニックを頻繁に経験するのであれば、特に環境にこだわりがない場合、取り返しのつかないことになる前に、環境を変えることをお勧めする。

一方で、あくまで自分はだが、世間一般に良しとされる、自律神経の調整方法では、目立った改善効果が得られなかったのも、また事実。

自分にとって、あまり効果が見られなかったものが、瞑想・マインドフルネスと呼ばれる、自律神経の調整方法で鉄板のものである。

しかし、今ならなぜあまり効果が得られなかったか、説明ができる。

瞑想やマインドフルネスは、腹側迷走神経(緑)や背側迷走神経(青)を使う、自律神経レベルが低覚醒の治療法であると言える。静かに呼吸や体の感覚に集中し、雑念に気を取られない時間を増やすトレーニングであり、原則的に「他人と一緒に」というよりは「静かに一人で」行う試みのため、緑+青のブレンド領域の活動であるように考えられる。一方、自分が苦しんだ症状は背側迷走神経のギアセカンドであり、自律神経のレベルがかなり低覚醒モードにシフトしていた。つまり、青や紫の状態を青+緑のブレンドによって引き上げようとする試みであったのである。

おそらくだが、瞑想やマインドフルネスは「自律神経のレベルが過覚醒気味」の人に効果がある療法なのだ。赤や赤+緑のブレンドで悩まされている人が、緑+青のブレンドにシフトすることで自律神経のレベルを低覚醒方向にシフトさせることができる。瞑想やマインドフルネスは、過覚醒シフトしている人に有効な両方で、元々低覚醒シフトしていた自分にはあまり効果がなかったのだ。

「超パニックの繰り返し」は荒療治なので、人には勧められないが、「両親と同居」と「キックボクシング」は低覚醒シフトに悩んでいる人にとって、緑や赤+緑ブレンドを刺激する安全な方法として勧めることができる。

「両親と同居」つまり、「安全な人といる時間を増やす」のは腹側迷走神経(緑)を刺激する行為であると想定される。これは緑+青のブレンドである瞑想よりも、自律神経が一段上の営みである。自分のような中年の男性に両親と同居を勧めるのは、情けない話でもあるのだが、背に腹は変えられないという言葉もある。自分がそうだったように、これ以上、希死念慮に苛まれる朝に耐えられないのなら、そして、同居を許してくれるくらい両親と家族仲が良好ならば、人生のうち数年~10数年、子供返りし、甘えるのもいいだろう。自分のようにアダルトチルドレン気味に育てられ、厳しい幼少期を育った者は、大人になってから両親と再同居することで、擬似的な幼少期のやり直しも可能で、インナーチャイルドの癒しになったりもする。

「両親と同居」以上に万人に勧めやすいのは、キックボクシングであり、これは赤+緑のブレンド領域の営みで、自律神経のレベルがさらに一段上である。こちらは近所にジムがあり、会費さえ払えば誰でも始めることができる。

一般的に、PTSDの治療に格闘技は良しとされる。カウンセラーさんにもそう教わったし、ネットにもその手の記事がゴロゴロと転がっている。

格闘技で心を開放する ―危険の効用―(大久保街亜:専修大学人間科学部教授)#もやもやする気持ちへの処方箋

格闘技にもボクシングや柔道と幅が広く種類があり、個人による親和性の違いもあるだろうが、自分にはキックボクシングがマッチしていた。

うつ病・複雑性PTSDになってからもバスケはずっと続けていたのだが、バスケは暴力性よりもゲーム性が強く、経験があり、頭を使えば戦略的に勝ててしまう部分があり、自律神経の向上にそれほど大きな効果がなかったように感じられる。

一方のキックボクシングは、明確に暴力であり、始めたからと言って万人に褒められるものでもなく(バスケ始めた、というよりも、ボクシング始めたと、いう方が親や友達に怪訝がられるだろう)、恐怖心が伴い、体も痛く苦しく、刺激が強い。

だが、超パニックが自分の自律神経のレベルを引き上げたように、何か沈んでいるものを引き上げるためには、パワー、つまりある程度の刺激の強さのようなものが必要なのだと思う。その意味で、数多ある格闘技の中でも、ボクシングやキックボクシングは、原始的で、より暴力的で刺激が強く、脳に直接的に訴えかけてくる側面があるにも関わらず、安全に行えるという点で、自律神経レベルを覚醒方向にシフトさせるための療法として、ベストに近いものなのではないかと思う。

以上が、うつ病・複雑性PTSDに10年以上苦しめられた自分が、ポリヴェーガル理論に触れ、辿り着いた、これらの病に対する暫定的な解答である。

もちろん、うつ病は自律神経のみでは説明できず、アンヘドニアや扁桃体ハイジャック、学習性無力感などの脳機能の低下も関与し、認知行動療法のように「善悪の価値観」の書き換えも大事である(例えば「遊ぶことは悪いこと」みたいな認知を「遊ぶことは大切なこと」と書き換えること)。

5年前に私は「うつ病寛解のための3ステップ」という記事を書いた。この記事内でも「脳機能がすとんと落ちることを経験した」と書いているが、これこそがまさに「背側迷走神経のギアセカンドの解放」であった。

最後に、繰り返すが、これはあくまで私一人の経験から導き出された解答の一つであり、正しいとも限らない。うつ病の症状には個人差があり、発症する経緯もさまざまである(ただ最近「純粋なうつ病」って存在するのかな?とも感じる。というのも、多くの人が「学校でのいじめ」とか「会社でのハラスメント・オーバーワーク」による「慢性的に逃れにくいストレス」が原因となっていて、複雑性PTSD的なものが原因となっているケースが大変多いように感じるから)。うつ病は「認知の歪み・価値観の見直し」「脳機能」「自律神経」などを考慮し、多角的なアプローチで治療していくことが重要であるというスタンスを私はとっている。

それでも、私が悩み抜いて、病み抜いて、たどり着いたこの集大成的な答えが、誰かに共感してもらえると嬉しいなとも感じる。

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