自分は金縛りにかかるタイプである。母も昔はよく金縛りにかかっていたというので、完全に遺伝である。自分は体質という面で、非常に母そっくりなのである。
正確には覚えていないのだが、初めて金縛りにかかったのは小学生高学年から中学生頃だろうか。初めて経験した際はそれが金縛りかなんなのかもわからなかったと思う。だが高校3年生の受験期に金縛りを頻発するようになってから、母にも相談し、自分が金縛り体質(カナシバリスト)であることに気がついた。
金縛りはしばしば心霊現象と結び付けられるが、違うと言っておこう。金縛りは脳とか神経とか、そういう生物学的なものに起因し、遺伝もし得る。そして金縛りにはある種の「発動条件」のようなものが存在する。
自分の場合、寝る前に頭をフル回転させると、ほぼ確定で金縛りに遭っていた。具体的には高3受験期の数学の証明問題である。初見の証明問題を、めちゃくちゃじっくり制限時間内に解くことを目指して回答し、その直後就寝に入ると、100%で金縛りを体験していた。
この経験は「金縛りは体は寝ているけど、脳が起きている時に引き起こされる」という一般論とも合致していた。1日が終わり体は疲れているけど、数学の証明問題でアクティブになった脳は覚醒状態のままなのである。
金縛り発動時、意識はあるが体が全く動かない。だが覚醒状態ではおそらくなく、眠っている状態ではあると思われる。なぜなら目を開けることができないからだ。
金縛りの経験回数が浅いうちは、なんだか怖くて、ずっと体を動かさないようにしていた。そうすると時間が経つと、自然と金縛りが体から抜けていく。だが、時は受験期。夜中になるべく数学の証明問題は避けたいところだったが、そういう訳にもいかず、私は金縛り覚悟で証明問題を解き、そして毎晩のように金縛りを経験していた。
最初こそ得体が知れず怖かったが、慣れてくると「また来たか」と冷静に金縛りを受け入れられるようになる。そうすると次なる一手を試したくなるのが人間というもの。自分は早く金縛りを解消するために「金縛り中に無理やり体を動かす」ということを試みのである。
金縛りで体が硬直している最中に、無理やり手足を動かそうとする。すると、ほんの少しだけ体が動く感覚があるのである。すごく重い段ボール箱を全力で押して動かして、ゆっくりゆっくり動くような、そんな感じ。
だが、金縛り中に体を無理やり動かそうとするのはあまり良くなかった。なぜか金縛りがループするのである。頑張って、ゆっくりゆっくり体を動かそうとして、一瞬、体が動くようになって金縛りが抜けたのかなと思う。だが数秒後にまた金縛りが発動するのである。そして、体を動かそうとするとこのループから抜け出せなくなる。だから、金縛りの最中は動こうとせずに、じっとしているしかないのである。
金縛り中に無理に動こうとする試みは、金縛りのループ現象がしんどいので、割とすぐに控えるようになった。だが、自分の金縛りは、最初の頃に経験した「シンプルに体が動かなくなるもの」から「何かしらのイメージを伴うもの」へと進化していった。
よく例に出される「枕元に女の人が立つ」みたいなことも金縛り時の映像として実際に出てきた。おそらくだけど「金縛り=枕元の女の人」みたいな先行イメージがあったから、それに引きづられるような形で、イメージが具現化されたのだと思う(具現化系か!)。そして自分の金縛りに現れる女性はついでに自分の首を絞めてくることが多かった。
怖いということはなかった。なぜなら夢とは違い、金縛り時の頭は、明確にそれが金縛りであることを理解しているからだ。金縛りに合っている時、頭は想像以上にクリアなのだ。女の人が出てきても「別にあなた出てきてもいいけど、首絞めることも含めて、とっとと終わらせてくれ〜!」みたいな感じである。
高校生の頃にはすでに自分の金縛りは1.シンプルに体が動かなくなるもの→2.無理やり動こうとして金縛りがループするもの→3.金縛り時に女の人が現れて、首を絞めてくるもの、へと変遷していっていた。
受験期が終わり、大学生になって、夜中に頭をフル回転させる必要性もほとんどなくなったため、金縛りの頻度は低下した。それでも20代の頃は月に一回くらいは金縛りを経験していたのではないかと思う。
金縛りの形もどのように変遷し、上記の1~3のパターン以外にも数パターン経験した気もするが、全てを正確には覚えていないと思う。しかし最終的には以下のパターンに収束している。おそらく20代の後半に初めてこのパターンの金縛りを経験したのではないかと思う。
そのパターンは、少しややこしいのだが、Stepごとに分けると以下の形式になる。
ます、受験期と異なり、この金縛りが起きるのは明け方の寝起き直前である。最近は起床のタイミングよりかは、むしろ二度寝した後に起こることが多い気がする。
[Step1]金縛りが起き、意識がクリアになり、体が動かないこと、金縛りが起きていることに気づく。
[Step2]では女の人が現れるケースもあれば、このStep2自体がスキップされるケースもある。
[Step3]で動けるようになる。目が覚めて、起床し、着替えたり、その日の準備を始めようとする。
だが、このStep3がものすごい罠で、寸分違わない自室の様子がはっきりと目に映り、自分は歩けていて、行動できているのであるが、これもまだ金縛りの最中で夢の中なのである。普通の夢だと、見えている光景に何かしら不自然な点があったりするものだが、このStep3の時に見える部屋は、本当に自室と全く同じで、それが夢かどうか、全く区別がつかないのである。
[Step4]10数秒程度、Step3の中で行動し続けるのだが、急に膝から崩れ落ち、またStep1に引き戻されるのである。その後、Step2はスキップされるのだが、Step3の現実と寸分違わぬ部屋で目覚め、しばらく行動し、膝から崩れ落ち、Step1へと引き戻される。
というループが4~5回繰り返されるのである!
初めてこのパターンの金縛りを経験した時は本当に衝撃で、Step3で「このリアルさは流石に現実だよな」と思うのだが、膝から崩れ落ち、またStep1に引き戻され、またStep3に移行するのだが、「今度は流石に現実だよな」と思って、希望を持って行動するのだが、再びStep1に戻されてしまう。
金縛り中に見える映像と現実世界がほとんど同じなため、「金縛りから抜け出せたと思っても抜け出せていない」という恐ろしいタイプの金縛りなのである。
そして、何回か繰り返すと、ようやくちゃんと目が覚めて「ああよかった、リアルな世界に帰って来れた」と安堵する。
初めてこのパターンの金縛りを経験した時はかなり驚いて「流石にこんな経験をすることはもうないだろう」と思ったのだが、不思議なことに、予想に反して、40歳に差し掛かる現在に至るまで、自分はこのパターンの金縛りを年に数回経験するのである。
パターンとしてはもう何回も経験しているので、このタイプの金縛りが起きるたびに「またこのパターンか」とは思うのだが、いかんせんStep3の金縛り時の夢の世界の自室が、ベッドから壁から家具から何かな何までリアルすぎて、そして実際に自分は「起きている感覚」があるので、Step3の世界が夢の中か現実か、いまだに区別できない。
自分が金縛りに遭う体質だというのは親も友人も知っているのだが、このように金縛りの形が変遷し、特異なパターンの金縛りを経験していることに関しては誰にも話したことがなく、このブログで初めてオープンにする。
信じてもらえないかも知れないが、本当に自分はこのパターンの金縛りを経験しているのである。


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