デラウェアにカブトガニの死骸を見に行く

デラウェアにカブトガニの死骸を見に行った、というよりはデラウェアのビーチに行ったらカブトガニの死骸が散乱していたという方が正しいだろう。

来てからの数年間はうつ病がひどく、その治療のためにほとんどの時間を費やしていた。せっかくアメリカに来たのに、本を読んだり、日記で思考をまとめたり、カウンセリングに通ったりと、自分の内面を整理することに忙しく、メリーランド近辺以外はフィラデルフィアとニューヨークにしか行っていない。

以前友人から、デラウェアにあるビーチでカブトガニの産卵が見れると教わった。6月の新月が最後のチャンスだったのだが、職場復帰(いわゆるNIHのGroupA)と重なり、まだかろうじて仕事に対して真摯な部分を持ち合わせていたので、諦めて仕事の準備に時間を回した。

しかし、それからなぜか「海が見たい」という柄にもない願望が芽生え、それはどんどん膨らんでいった。うつ病がまだ寛解途中であり、依然として朝起きれなかったり、新しいことが億劫な状態で、なかなか海岸まで出かけることができなかったが、昨日ついに意を決してデラウェア州にあるBowers beachまで出かけた。この日も例によって朝起きられず、目覚めが12時ごろで家を出たのが1時ごろであった。「こんな体調で遠出して大丈夫だろうか?」という思いもあったが、なんかいろいろ諦めて家をでた。

自分がいるBethesda近辺からBowers beachまでは車で2時間くらいだった。Chesapeake Bay Bridgeという橋がメリーランド州からデラウェアまでかかっていて、これにえらく感動した。めっちゃでかい橋が、ずーっと海にかかっていて、その上を車で通るのだ。このためだけにデラウェアに渡る価値はあると思う。

Bowers beachについた。海は想像以上に泥色だった。別にゴミが散乱していた訳でもなく、というかビーチそのものは大変綺麗だったのだが、如何せん水の色が茶色いというか黒いというか。多分もともとこういう色なのだとは思うが、日本の海しか知らない自分からすると新鮮だった。その茶色い水の中を普通に泳いでいる人も見かけたので、特に問題はないのだろう。

とにかく茶色いデラウェアの海
海と家が近過ぎる。

海岸を散歩していると、ちらほらとカブトガニの死骸を見つけた。甲羅の断片がほとんどだったが、綺麗に形が残されている死骸もあり、大きいハエがたかっていた。ひっくり返すとグロテスクな光景が見れそうだったが、その勇気はなかった。

カブトガニの甲羅の断片。立派である。
ハエがたかっている死骸。ひっくり返してみたかったが、勇気が出なかった。

自分の目が正しければ、一匹だけ生きた個体が海を泳いでいた。死骸が流されているだけかとも思ったが、尻尾が生き生きと動いていたので、多分生きていたのだと思う。そして自分が死骸だと思って取ったこの写真も実は生きていたのかもしれない。

もしかすると生きていたのかも?

カブトガニは生きたカセキと呼ばれる原始的な生き物だ。そして、ひっくり返ると自力では戻らず、そのまま息絶えてしまうらしい。だから看板のように「カブトガニをひっくり返そう」キャンペーンが昔から行われているようだ。来年こそは体調を整えて、ぜひ産卵を目撃したい。そしてカブトガニをひっくり返して、彼らにとっての救世主となりたい。

帰りは眠気に襲われたが(自分は高速道路の単調な運転が苦手)、備えていたレッドブルでなんとか無事自宅までたどり着くことができた。帰ってきたのが7時ごろだったので、合計6時間くらいの旅だった。最近はロゼチコ を使ってモンスターボールのみありのタイマンという陰険な優先ルールでスマブラをするという不毛な時間の使い方にハマっているので、それに比べると倍くらいは有意義な時間だったと思う。

この状況でどこまで観光できるかわからないが、うつ病とうまく付き合いながら、残りのアメリカ生活を堪能したい。

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