任期が近いから新しいプロジェクトにチャレンジしない

NIHの任期も残りが少なくなってきて、自分の研究プロジェクトをまとめにかかっている。

そんな中、自分が現在の研究室で、新たなプロジェクトに全然着手しようとしていないことに気がついた。実際のところ、今から新しいプロジェクトに着手しても、任期内に論文として完遂させることはできない。

また、自分が手がけた研究テーマが、自分の任期内に終わらなかった時、多くの場合で、それらの研究テーマは宙ぶらりんの状態でほったらかしにされる、という状況をよくみてきたということもある。余程、そのプロジェクトが研究室にとって重要でない限りは、後任も前任のプロジェクトをやりたがらなかったりするので、多くのデータが論文として世に公表されることなく、ラボ内に蓄積されていく。もったいない状況だなと思う。

「研究ポジションや研究予算を獲得するために、論文が必要で、論文まで漕ぎ着けることができないから、新しいテーマや難解なテーマには手を出さない」

この姿勢は、現在の研究状況を考えると、最もな姿勢だと思うし、自分を含め、多くの研究者がこういう姿勢で仕事に取り組んでいる。

でも、なんか変な話だな〜とも思う。本来、研究者は知的好奇心に突き動かされて、研究していたはずなのに、研究するかどうかの基準が「論文になるかならないか」になってしまっている。なんというか、「お前の知的好奇心、どこに行ってしまってん!?」という感じなのだ。

それに、こういう姿勢は、サイエンス業界のためにもならない。本来なら、難解なチャレンジングなテーマにこそ、実験予算を投じる価値があるのに、無難なテーマや、論文目当ての無難な研究しかしないポスドクのためにだけに予算が投じられていく。もうそろそろ、研究業界全体が、任期性の良し悪しについて見直すべきだと思う。

かくいう自分も、やすい論文目当てのゲスいポスドクだが、研究を始めたての昔のように、知的好奇心に突き動かされる状態をなるべく忘れないように心掛けようと思う。

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