パニックの夜

5月の連続パニック事件の、一睡もできない夜の感覚を詳細に記述して、残しておいた方がいいと思った。

眠れそうにない日は大抵、研究室で刺激がある日だった。多くは自分に対するプレッシャーや、ラボメンバー同士の不和とか、扁桃体が刺激されやすい出来事である。普通の人からすれば、決して眠れなくなるような出来事ではないのだが(実際、パニックの期間が過ぎると、なんであんなことで一睡もできなかったのだろう?と思うことばかりであった)、複雑性PTSD持ちの自分は「トラウマの再体験」によって過覚醒してしまっていた。

しばらくは曝露療法の一環だと信じて、一睡もできないままラボに行くということを続けていたが、5月にあまりに連発し、心が折れてしまい、我流の曝露療法も一旦は終了となり、精神神経科に通うことになった。

ただ、薬を飲み始めてから数ヶ月経つが、調子が良く、結果としてパニックになってよかったかなとも思っている。日本でアカデミアという強度の高い仕事を続けている限り、多分こういったパニックは定期的に訪れていて、それに曝露療法で対処し続けるのは限界があったように感じられる。かといってパニックが訪れていない、元気な時に精神科に行くきっかけもない。今回が契機となり、睡眠薬のおかげで、平時のQOLも上がっている気がする。こんだけ楽になれるなら、数年単位で通院を続けると思う。

やめたい、やめたいと思いながらも、自分は病院通いになるまではアカデミアをやめなかった。こういう選択がいいか悪いかはさておき、なんだかんだでタフだなと、その面は自分とエリーを褒めてあげていいのかもしれない。

5月までは基本的によく眠れていた。というか寝過ぎていたぐらいだった。特に何も気にすることなく、夕食を食べて横になると眠くなり、歯磨きもせずに寝落ちして、11時くらいには眠りについていることが多かった。

日中、仕事のストレスで過覚醒した時は、まず脳に「もや」がかかった感じがあり、きっかけになった出来事が頭から離れず、怒りや失望や不安や恐怖や焦りが持続し続け、帰宅後、その日の愚痴を親に聞いてもらいまくっていた。そして、そういう日は自然と寝落ちする、ということがなく、ベッドに横になってもウトウトするということがない。

覚醒しているので、歯磨きもできて、12時ごろに寝ようとするのだが、一定の時間が過ぎると、入眠に失敗して、再び覚醒してしまう。覚醒する時は、よく体が熱くなった。体にオフにできないスイッチが入ってしまう感じだった。その時は、仕事のプレッシャーから焦燥感を感じ、「寝ている場合なのか?」みたいな感じで、体が熱くなり、臨戦体制に入ってしまう感じだった。

扁桃体のエリーちゃんは「締切」と「命の危機」を区別することができない。

何度も寝ようとトライするのだが、脳がずっと覚醒して意識があり、意識がなくなるということが起こらない。頭の中は常に仕事のことや将来のことを考えていて、趣味のこととか、バラエティ番組のこととか、ゲームのこととか楽しいことを考えてくれない。

ChatGPTで調べた、深呼吸の方法もトライするのだが、一瞬落ち着いて、入眠できるかな?と期待するのだが、すぐに再覚醒してしまう。何度かベランダに出て、夜風に当たることもあった。夜、散歩してこようかなとも思ったが、結局それはしなかった。歩くよりは、眠れなくても横になっている方が、体力的にいいと思った。

あと、やたらと腕に力が入った。寝ようとしているのに、腕が硬直して固まっている。まるで、敵のパンチにすぐさま反応できるように、腕が準備しているみたいだった。臨戦体制が夜通し抜けなかった。

一睡もできなかった朝は決まって超弱気になってしまって。母に半泣きで、あるいは本当に泣きながら「仕事を辞める」と伝えるまでがセットだった。アカデミアを辞めることができたら、どんだけ生活が楽になるだろうか…そう思うことは薬物療法を始めた今もしばしば思う。

一睡もできずフラフラではあるのだが、行きの電車の中でも、職場でも、それでも眠くなることはなかった。トイレで昼寝でもできたらありがたいのだが、それすら叶わない。

トラウマの再体験で寝れない時の感覚は大体こんな感じ。5月まではこれが一夜で済んでいて、週末の寝溜めで回復することができたのだが、5月以降はこれが連発し、dutyがこなせないレベルまで到達してしまい、自分は白旗を上げて、仕事を休んだ。

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